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高齢の社長が辞めてくれない!

後継者の方から、よく相談される内容です。

「俺は死ぬまで社長をやる!」と真顔で言い切る社長もおられました。

特に自ら創業した社長にとって、会社は人生そのものだったりして、辞めたくない気持ちも分かります。でも、当然、永久的に続けられるものではありませんし、人間ですから歳を取るにつれて気力や判断力も低下、また健康面のリスクも年々高まってきます。

前にも書きましたが、事業承継は会社の経営を持続するため、後継者が経営しやすい環境づくりを行うことが基本です。それをどう理解してもらうかですね。

 

従業員10名弱のある食品メーカーでは77歳の社長が急逝し、息子さんが引き継いだものの生前には経営内容を全く知らされておらず、累積赤字と多額の借入金の実態を初めて知ったそうです。経営の勉強も全くしてこなかった後継者が、現在、従業員と一緒に経営再建に大変苦労されています。

また、ある食品卸会社はワンマン社長が急に病気で倒れて長期入院、その会社は結局、解散することになりました。

 

◇後継者への引継ぎ期間は3~5年間

 後継者が決まってから引き継ぐまでの期間は3~5年間が多く、5~10年間を合わせると5割以上といった調査結果もあります。年齢や社内での経験内容にもよりますが、社長による後継者の育成や後継者自らの知識や経営感覚の収得、社内や取引先との関係づくりといった点からは、一定期間の準備が必要です。急な社長交代は後継者にとっても会社にとっても不幸です。

 

◇若い社長は経営に対する意欲が高い

 ベテランの社長は長年の経験では若い経営者には負けないでしょう。一方、年齢が若い経営者の方が投資意欲は高く、利益率も高いといった調査結果もあります。年齢を重ねると、普通の人間は何事にも保守的になり、特に昨今の激しい事業の環境変化への柔軟な対応力は若い経営者の方が勝っていると言えます。

 

◇取引先や金融機関の見方の変化

 取引先や、特に金融機関は敏感です。後継者がいるか・いないかは当然のこと、事業承継の準備ができているか、リスクがないかについては会社の信用にも関わってきます。

 

では、どのように話をしていけばいいのでしょうか。

 

◇仮でもいいので交代時期をきめる

 事業承継がすすまないことに対するリスクを理解してもらい、まずは仮でもいいので交代時期を決めて準備をすすめていく。交代時期になっても納得がいかなければ先延ばしすることもありうる程度の決め方でも十分です。

 

◇後継者との役割を切り分ける

 社長が80歳を超えているある会社では、新規事業も始めたい、また社長の思い入れが強い事業がはっきりしていたため、妥協策として、とにかく社長は交代して会長として残り、新社長の担当分野、会長の担当分野を明確に分けることにしました。とりあえずは「何かあっても」リスクは下がります。

 

◇家族や第三者を入れて話をすすめる

 

 親子、特に父と息子の場合は、なかなか話がすすまない場合が多いようです。その場合、社長の奥さん(母親)に話をしてもらうことや、第三者の金融機関や私どものような専門家を入れて他社の事例を含めて話をしていくことが、一つのキッカケになります。