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後継候補が二人いる場合、「仲の悪い長男と次男」、どう引き継ぎますか?

 後継者不在の会社が多く問題になっていますが、一方で意外に多いのが息子や娘が二人、三人とも社内にいて、誰を後継者にしたらいいか、また後継者以外はどのようにしたらいいか、という相談です。事業の将来性を感じたということもあるとは思いますが、小さい頃から親の仕事を身近で見てきて会社に入った、ある意味、親の教育の結果かもしれません。

 ただ、兄弟や姉妹の仲の良し悪しもあって、いろいろと問題が起きてきます。

 

 仲が非常に良くてお互い協力し合っている場合。

 まずは、社長も入ってお互いに十分話し合ってもらい、どちらを後継者にするかを決めてもらいます。あまり能力や経営者としての適性に大きな差がない場合、一般的には長子(長男・長女)を後継者にする場合が多くみられます。お互いの理解や社内の従業員、取引先や金融機関などの外部の見方からも、そちらの方が「座り」がいいようです。少し年齢差がある場合は下の子が、次の社長になる計画を組む会社もあります。

ただし、お互い納得していても、役割分担をはっきりと分けることが大切です。後継者は経営管理と営業、もう一方は経理や工場の管理などなど...。

 さらに株式はどうでしょう。株式は後継者に集中することが基本といわれます。

 お互いに協力し合って経営していく場合、後継者以外にも一定の割合で株を承継することが、経営に対するヤル気を高め、協力関係を、より強める効果があります。後継者に過半数の株を承継することを基本にしつつ、配分は柔軟に考えてもいいと思います。

 

 一方で、兄弟(姉妹)仲が悪い場合。よく見られるケースです。

 ある会社では、面談の初回に、社長から「会社を分割したい」との相談を受けました。

理由を聞くと、長男を後継者と考えているが、二男は、いつも長男の意見に反発して、長男が社長になるのであれば会社を辞めるかもしれないというのです。売上高10億円、従業員50名くらいの設備工事会社でしたが、仮に会社を分割した場合に事業規模や社内体制から競争に生き残れるか?と、何とか押しとどめ、事業部門を分けて二男を専務取締役として責任と権限を与えて役割分担を明確にしてもらいました。

また、別の会社では長男と二男、二女の3人が社内におられ、社長と奥さんの5人で後継者を決める家族会議の席上、長男を社長にするという流れになってきたところで、二男が「兄貴が社長になるのだったら俺は会社を辞める!」と席を蹴って会議室を飛び出していったこともあります。その会社は、今でも事業承継がすすまず、75歳を過ぎても社長を続けています。

 

後継者の選定に苦労する場合、そもそも兄弟仲が悪いのは、何といっても日頃から社内や家族内でのコミュニケーションが不足していることが根本的な原因と思われます。

 

経営者の必要な能力や資質はあります。そのうえで、後継者を決めるのは、何といっても社長が中心になって、十分に話し合いを行いお互いに納得してもらうしかありません。